Case Study

「震災に関連する法律問題(1)」

東日本大震災によって、震災に関連した法律問題が種々発生していますので、その中で、相続に関連した部分の取り扱いを紹介します。

「①同時死亡の推定規定」 民法では以前から、例えば父と子が、同一の災害や事故で死亡し、死亡の前後について正確な把握ができない場合には、「同時に死亡したと推定する」と定めています。これにより、相続の順番が、通常とは異なることになります。例えば父Aには妻Bと子C、子Cには子Dがいるというケースで、死亡診断書などにより、Aの死亡後にCが死亡したということがわかっている場合は、通常は、被相続人であるAの財産は、まず妻Bと子Cが相続し、Cの死亡後に、Cの財産を子であるDが相続するということになります。しかし、AとCが同じ震災により死亡したが、死亡の前後がはっきりしないという場合には、同時死亡の推定規定により、AとCは同時に死亡したという扱いになり、AとCとの間では相続が開始せず、Aの財産を妻Bと孫Dで相続することになり、簡明に相続関係を処理できます。大震災では、親子が共に亡くなるという不幸な事例もあり、この規定の適用事例があると思われます。

「②相続放棄の熟慮期間の伸長」 被相続人が、財産もなく多額の債務を負ったまま死亡したような場合には、相続人は、相続の開始を知ったときから3ヶ月の熟慮期間内に限り、家庭裁判所に対して相続放棄(限定承認を含む)の申述を行なうことができます。この期間を過ぎると、相続放棄をすることができず、相続を単純承認したとして、相続債務も承継することになるので、相続人の立場では、熟慮期間がいつまでかということは重要な問題になります。しかし、今回のような大震災により被災した相続人にとっては、相続が開始されたことは認識していたとしても、3ヶ月という短期間に相続の放棄を考慮することは、現状を考慮すれば無理があると考えられます。そこで、被災者を対象とした特別立法が本年6月に成立・施行され、①震災発生時の平成23年3月11日に被災地(対象地域は岩手、宮城、福島等9県のうちの指定された市町村)に住所を有していて、②平成22年12月11日(震災の日の3ヶ月前)以降に自己のため相続開始があった事を知ったという相続人の方に対しては、熟慮期間が平成23年11月30日まで延長されています(詳しくは法務省のホームページなどを参照下さい)。

「③失踪宣告」 災害や事故などによって死亡の可能性が高いと思われるにもかかわらず、死亡の確認ができない場合には、調査にあたった官公署の調査報告により、死亡地の市町村長が、戸籍に死亡の事実を記載することになっています(認定死亡)。また家族などが家庭裁判所に対して申し立てをし、失踪宣告という民法の制度を利用する事も考えられます。普通の失踪の場合は、最後の音信の時から7年経たなければ失踪宣告の申し立てができませんが、大災害の場合など、特別の危難があった場合には、危難が去った時から1年間音信不通で生死不明であれば、特別失踪の申し立てができ、家庭裁判所の宣告により死亡したとみなされ、相続が開始されます。