Case Study

「遺留分減殺請求の効果と価格弁償」

親が亡くなり、相続人が子供2人(兄と弟の法定相続割合が各2分の1)で、遺産が土地1筆だけであった場合に、遺産の全部を長男に相続させるという遺言公正証書があったとしても、弟は、兄に対し、相続開始を知った時(通常は死亡時)から1年以内に「遺留分減殺請求の意思表示」をすれば、法定相続分の半分(4分の1)を相続することが出来ます。相続の法律的効果により、兄が一旦は土地の単独所有者となるものの、弟の遺留分減殺請求の意思表示により、土地の4分の1の所有権が弟のものとなり、4分の3の所有権を持つ兄と、土地を共有する状態になります。
 ところで、兄弟2人の共有状態にある土地(遺産)をどのように分けるのか、また、分割が不可能だったり、兄が単独で所有したい場合などには、どのように分割をすることになるのでしょうか。
遺産分割は、現物の分割を原則としますので、弟は、遺留分減殺請求の意思表示をした後には、兄に対し「現物返還」を請求できる事になります。
通常は、土地を測量して、兄が4分の3、弟が4分の1になるよう土地の分筆を行ない、それぞれが区分・区画された土地を所有するということになりますが、兄弟でどちらがどの部分を取得するかなどについて協議が整わない場合には、共有物の分割の裁判によって決めることもでき、現物分割ができない場合には、裁判所が物件の競売を命ずることもあります。
土地の分割が難しかったり、分割で価値が著しく下がったりすることなどにより、兄がその全部を取得したいと考えた場合には、兄は、遺留分減殺を受ける限度において、遺贈の目的の価額を、金銭で遺留分権利者である弟に支払うという方法(価額弁償の選択)も認められています。
 この場合の価額は、兄弟が合意した不動産の評価額により算出されることになりますが、例えば兄は5000万円だと言い、弟は1億円だと言って、双方譲らない場合には、不動産鑑定による評価額などにより決められることになります。
 また、兄が弟に対し、土地の現物分割ではなく価格弁償をしたいと希望しても、弟がこれに応じず現物分割しか承諾しない場合や、弁償する価格について争いがあったりした場合には、判決が確定したらその金額を速やかに支払うという意思表示をして、裁判所に提訴することができ、それが認められれば、実際の価額弁償の実行により、遺産分割が行なわれるということになります(判例)。
トラブルとしては、兄が、弟から遺留分減殺請求を受けているにもかかわらず、第三者に土地を売却し、代金を受領・費消してしまうことなどがあります。弟としては、自分の持分を売却され、本来受領できた売買代金の4分1相当額を兄に取られることになりますので、兄に損害賠償を請求するという訴訟問題にも発展します(横領罪が成立する可能性もあります)。遺言書があっても、遺留分により認められる権利などには注意が必要です。