Case Study

「身分行為について」

成年後見人は、認知症などの理由により判断能力が劣っている人の財産について、家庭裁判所の審判により代理権や同意権を付与され、その管理や処分ができることは割合知られていますが、それ以外には何ができるのでしょうか。
婚姻や離婚、あるいは養子縁組や認知など、人の親族関係や身分を決める基本となる行為(身分行為といわれます)は、人に代わって決めてもらうことはできませんので、財産管理等とは異なり、成年後見人であっても、これを代理して行うことはできません。
 それでは、既に成年後見人がついている人(成年被後見人)の場合、その配偶者はもう離婚ができないのでしょうか。
 まず、病状がそれほど深刻でなく意思能力がないとはいえない場合、自分の判断である程度の財産管理ができており、後見人の同意があれば財産を処分できる人については、離婚についても自分で判断ができるとされ、自分で離婚の意思を決定出来ます。民法も、成年被後見人が離婚するには、成年後見人の同意を要しないと定めています。
 しかし、それ以上に病状が進んでおり、意思能力がなく、完全な心神喪失状態である場合には、離婚の認識も出来ず、その判断を求めることは困難ですから、また成年後見人も離婚についての代理はできませんから、原則として、離婚することはできないと考えられます。
 ところで、民法770条4号は、「配偶者が高度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は離婚事由になるとし、離婚訴訟により、その配偶者と離婚できると規定しています。ある判例は、この解釈について、離婚訴訟を行う前提として、まず配偶者に対して家庭裁判所による禁治産宣告(後見開始の審判)を求めることが必要であり、そののち、後見人もしくは後見監督人を相手方として離婚訴訟ができるとしています。またその場合でも、配偶者の療養や生活の目途が付かない状況では、離婚は許されないとしています。