Case Study

「遺言の取り消し」

遺言書を書いた後に気持ちが変わったため、先の遺言を取り消して、新たな遺言書を作成したい、という時の問題です。
遺言書を書いても、死亡までには時間の間隔がありますので、気持ちが変わる場合があり、親が子供に、また夫が妻に、全財産を相続させるという遺言をした後に、子供が親の扶養を放棄したり、夫婦関係が破綻したりした場合には、遺言者は、遺言の名宛人を変更した遺言書を新たに作成することによって、前の遺言書に代えて、別な内容の遺言にすることが出来ます。
  遺言は、遺言者の最終意思を死後に実現するものなので、遺言書が複数発見された場合には、後の日付のものが、有効であると認められます。
  例えば、Aさんが「遺産の全部をBに遺贈する」という遺言を公正証書によって為した後、Bと喧嘩別れをしたため、更にその後、「Cに対し遺産の全部を遺贈する」という自筆の遺言書を作成していた場合には、Aさんが死亡した後に、2通の遺言書が発見されることになりますが、日付が後であるCに対する遺言が有効となります。
  同様に、「Bに対して遺産を全部遺贈する」内容の遺言書があり、その後の日付で、「Cに対して遺産のうち不動産の1つを相続させる」内容の遺言書が発見された場合には、抵触する部分の不動産についてはCが相続人となり、そのほかはBのものになります。
  また、「Bに対して不動産を遺贈する」内容の遺言書を一旦作成しても、Aさんがその後、死ぬ前に自分でその不動産を売却していれば、この遺言は取り消されたとみなされます。
  遺言書が何通も発見されるというケースも、ままあります。例えば、3通の遺言書があり、第二の遺言書に「○年○月○日の遺言(第一の遺言)は無効とする」と書かれ、更に第三の遺言書にも「×年×月×日の遺言(第二の遺言)は無効とする」として、遺言内容が取り消されている場合には、遺言者の最終意思が不明なので、第二の遺言を無効とする上、第一の遺言についても原則「復活しない」という民法の規定があります。
但し、同じように3通の遺言書があった事例で、第三の遺言書に、「第二の遺言状は全て無効であり、第一の遺言状を有効とする」内容の記載が明示されているものについては、判例は、「遺言者が第一の遺言の復活を希望していると認められる」として、第一の遺言の復活を認めています。遺言の解釈により、遺言者の最終意思を、出来るだけ実現しようとするものです。
「相続人の廃除」
 被相続人の生前に、配偶者や子、両親など、遺留分(配偶者や子等の一定の相続人のために、法律上必ず残しておかなければならない遺産の一定部分)を有する相続人について、①被相続人に対する虐待や重大な侮辱があったり、②相続人自身に著しい非行があったりした場合には、被相続人は、「相続人の廃除」を家庭裁判所に請求できます。廃除は、被相続人の意思に基づき、相続人の相続権を奪う制度です。
生前であれば、被相続人は自ら、家庭裁判所に、廃除の対象とする相続人を相手に、廃除の調停や審判の申立てをすることになります。また、遺言書に相続人の廃除を遺言しておけば、遺言執行者が、廃除の調停や審判を家庭裁判所に申し立てることになります。
非行のある長男など、特定の相続人に対し、相続財産を全く与えないつもりで、遺言や生前贈与で、ほかの相続人のみに財産を取得させたとしても、それが「遺留分」のある相続人であれば、権利を行使することで、遺留分に相当する財産は相続されてしまうことになります。しかし、「廃除」が確定されれば、その相続人は、相続財産を全く取得出来なくなります。そして、相続開始の時に遡って相続権が剥奪されるため、廃除の以前に金銭や不動産を取得していたとしても、ほかの相続人に返還することになります。
 具体的にどんな場合が該当するかというと、①では、被相続人を刑事告訴したり、不当な請求に基づき民事裁判を起こした場合などです。実際に、父親やその内縁の妻に対して立替扶養料を請求したことが重大な侮辱であると審判されたことがあります。また妻が、被相続人の夫と子供をおいて使用人と駆け落ちし、被相続人が自殺してしまったというケースでは、遺言書にその経緯が書かれていたので、廃除の審判がなされました。
②の例では、被相続人の父親の金員を無断で費消し、多額の物品購入代金を負担させた上、注意した父親に暴力をふるい家出した長男の行為は、著しい非行にあたるとされました。